14 Til I Die

消されるな、この想い

ミステリレビュー「プリズム」 著:貫井徳郎

プリズム (創元推理文庫)

プリズム (創元推理文庫)

 小学校の女性教師が死体となって発見された。ガラス切りを使って開けられた窓の鍵、被害者に届けられた睡眠薬入りのチョコレート、そして有力な容疑者の存在などから事件は早期解決されると思われたが、次々に新たな事実が明らかになり、事件の様相は刻々と変化していく……。

 恥ずかしながら解説を読むまで、本作がかの名作古典ミステリのオマージュである事に気が付かなかった。古典ミステリの愛好家の方々ならば、おそらくは早い段階で「原典」にあたるミステリ作品を思いつくだろうが、思いつかなかった方もどうか解説を先に読むような事はせず、本編を読了して頂きたい。当たり前の話だが、その方が本作を何倍も楽しめるはず。
 ミステリの楽しみ方には、大きく分けて作者に「騙される」楽しみと自分で「真相を推理する」楽しみとがあると思うが、本作は後者を楽しむための究極の類型の一つと言っていいだろう。
 もちろん、類型作品は世に多数有り、本作は「独創的」とは言えない。だが、それら類型の多くがただの「推理ゲーム」に陥ってしまっているのとは違い、本作は「ミステリ小説」としての本分をも忘れてない。つまり、まず読む事自体を楽しめるかどうか、を。
 読了後に、感想を他の人間と交し合いたくなる佳作。

評価:★★★☆☆

(初稿:2005/12/14)