14 Til I Die

消されるな、この想い

ミステリレビュー「迷路館の殺人」 著:綾辻行人

迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)

迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)


「館」シリーズ第3弾。
 トリックという点から見れば、間違いなく「館」シリーズ随一の作品。
 作中作で語られる事件。ほぼ全ての通路が迷路で構成されるという畸形の館。主である推理小説の大家。招かれた客達、そしてある条件の元に競作を強いられた主の弟子である若手作家達。全てが非日常の中で事件は動き出す……。
 本作を読む上での注意点を提示したい。本作をはじめとする「館」シリーズは必ず時系列で読む事を強く推奨する。さもなくば、通常のミステリでは「アンフェア」とされるトリックの数々に翻弄され、作品を正しく評価する事が困難になる事だろう。また、作中作の為か結末を間違える方が多々いるという。必ず「あとがき」まで辿り着くように。
 幻想色の強い「館」シリーズだが、本作はどちらかと言えば正統派に位置する。所々に仕掛けられたミステリへのオマージュも中々に楽しませてくれる。そして何より最後に待ち受ける真相。他の良作ミステリのそれが一撃必殺の「突き」だとすれば、本作のそれは受けた刀ごと一刀両断される「大上段」とでも言った所か。
 しかしながら、その「大上段」故に「刀ごと切るなんて反則だ」と言った類の批判もある。実際の評価は、是非ご自身で読了し下して頂きたい。

評価:★★★★★

(初稿:2004/08/09)