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14 Til I Die

消されるな、この想い

ミステリレビュー「黒猫館の殺人」 著:綾辻行人

「館」シリーズ第6弾。

 推理作家・鹿谷門実の元に送られてきた「自分が何者なのか調べてほしい」という奇妙な手紙。差出人は記憶喪失の老人。友人・江南と共に調査に向かった鹿谷を待っていたのは、かの建築家の手による館だった。老人の手記を読み解く内に明らかになる意外な事実とは……。

 「館」シリーズの中では比較的大人しく評価も高くないのだが、中々の佳作。過剰な期待をせずに読む事をお奨めする。
 本作の評価が低いのは、恐らくは次の二つの理由からだろう。一つは同種のトリックが国内の某ミステリ作品で既に使われている事。もう一つはあまりにもあからさまにヒントをちりばめている事。
 しかしながら、そういった理由から本作の評価を低く見積もるというのは、作品自体を正しく評価していない証拠だろう。確かに、他の「館」シリーズの様な大上段から唐竹割りにされるような衝撃も、物議を醸すような微妙な表現も無い。が、本作は佳作と呼ぶにふさわしいレベルにあり、また前作「時計館の殺人」では作品を通して「館」シリーズへのスタンスを示して見せた作者が、今回は「ミステリのトリックとはかくあるべき」というようなメッセージを示している点を評価したい。
 もし読了した方の中に、その「作者のメッセージ」に心当たりが無いという方がいたならば、是非再読をお奨めする。
評価:★★★☆☆
(初稿:2004/08/09)