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14 Til I Die

消されるな、この想い

ミステリレビュー「双頭の悪魔」 著:有栖川有栖

双頭の悪魔 (創元推理文庫)

双頭の悪魔 (創元推理文庫)

「学生アリス」シリーズ第3弾

山奥深くに存在する芸術家達の村に迷い込んだまま、マリアが戻らない。彼女を救出しようと出向いた推理研究会の面々だったが、行動半ばにして大雨により橋が流され、江神とマリア、織田&望月とアリスの二組に分断されてしまう。 そして、そんな彼らの状況に合わせたように、双方の周辺で殺人事件が……。

 まず、これから本作を読む方には、必ず前二作(「月光ゲーム」「孤島パズル」)を読んでから挑む事を強くお奨めする。前二作を読んでいなくともミステリとして支障はないが、作品の魅力が大きく減退する事だろう。
 「後にも先にも有栖川の最高傑作」と評される事も有る本作は、有栖川氏の他の作品と比べると格段に完成度が高く、エキサイティングな物に仕上がっている。
 シリーズ伝統の「吹雪の山荘」シチュエーションも三作目ともなればマンネリだろう、と思っていると思わぬしっぺ返しを食らう。激流によって分断されたそれぞれの土地で合わせ鏡のように殺人事件が起こる等というそれは、それだけで垂涎物のミステリではないだろうか。
 また、本シリーズはその登場人物達が非常に魅力的だ。下手をすれば少女漫画のキャラクターにでもなりかねない江神の人物設定や、アリスとマリアの微妙な関係など、作者の力量次第ではいくらでも薄っぺらくなってしまうものだが、しっかりとそれぞれの個性が発揮され、ミステリとは別の部分で彼らの物語自体を純粋に楽しめるレベルに達している*1
 これぞ「本格」ミステリ。
評価:★★★★★
(初稿:2004/08/18)

*1:反対に「火神・アリス」シリーズではあまりにも漫画チック過ぎるきらいがあるが