ミステリレビュー「暗黒館の殺人」 著:綾辻行人
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現在の所、シリーズ一の大長編。
本作を端的に評価するならば、次の二つに集約される事だろう。即ち、「『館』シリーズの最重要作品」と「ミステリとしては凡庸」に。
もちろん、本作のトリックや世界観について「凡庸なミステリ」であると主張するつもりはない。その二つについては、「綾辻行人以外には体現できない極上の世界」であると言えるだろう。しかしながら、本作では真相解明までの流れが冗長に過ぎ、またあからさま過ぎる伏線の数々によって、「たった一言で世界がひっくり返る」類の「心地よい驚き」を感じる事が困難になってしまっている(もし、あの人物の素性について「騙された!」と感じた人がいたならば、失礼ながら洞察力不足と言わざるを得ない)。
読者によっては、「人形館の殺人」の時と同じ「シリーズ作品が故の失敗」を感じる事になるかもしれない。また、あまりにも幻想小説に寄り過ぎた本作について、拒否反応を示す方もいるかもしれない。
しかしながら、本作を「シリーズの線引き的作品」と割り切ってしまうならば、決して非難された出来とまでは言えないという所が、本作の評価を困難にしている。どちらにしろ、シリーズの読者以外にはお奨めできない。
評価:★★★☆☆
(初稿:2004/09/16)
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