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14 Til I Die

消されるな、この想い

ミステリレビュー「絡新婦の理」 著:京極夏彦

京極夏彦 ミステリレビュー

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

京極堂」シリーズ第5弾。

あなたが――蜘蛛だったのですね

 なんとも幻想的な場面から始まる本編は、それが暗示するとおり、シリーズで最も観念的でありまた幻想色が強い。「鉄鼠の檻」とはまた違った意味で「シリーズ随一」との評価が与えられるのも肯ける。
 何者かの張り巡らした「蜘蛛の巣の上」で、登場人物達がいいように動かされるさまは滑稽でもあり、また恐ろしくもある。ただ、あまりにも「予定調和」過ぎるため、登場人物達は何が謎なのかさえも思い当たらず、また探偵たる京極堂が手を下す必要のある部分も極めて少ないため、今までのシリーズにあった「鬱積したモヤモヤを憑物落しによって払われる」感覚が希薄であるかもしれない。
 終盤に近づけば近づくほど、「蜘蛛」が誰なのかがはっきりと分かってくるため、「意外な犯人」的な驚きは薄いだろう。だが、読了後に残る何ともいえない寂寥感こそが、本作の魅力なのだろう。
評価:★★★★☆
(初稿:2005/10/23)