読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

14 Til I Die

消されるな、この想い

「子供の読解力が危ない」という話題で、むしろネット民の読解力の危うさが露呈してしまったお話

togetter.com
数日前に話題になっていた、上記Twitterのまとめ記事。Twitterはてなブックマークで、やたらと「問題が悪い」「引っ掛け」というコメントが飛び交っていたので、「また偏ったテスト結果晒して若者sageしてる類の記事か?」と思い読んでみると……、うんどこが「引っ掛け」でどこか「悪い問題」なのかサッパリ分かりませんでした!

そもそもこれは「読解力を問う問題」

まず、元ツイートの内容と添付の画像から、これは「教科書にある一文」を読んだ上で、次に提示された文章の()内に相応しいものを四択から選べ、という読解力を問う問題であることは分かると思います。英語の教科書からの引用ですが、英語の知識がいるわけではありません。あくまでも提示された「教科書の一文」の範囲内で語られている事柄と合致する選択肢を選べ、ということです。*1

英語の問題でこんなのがあったら怒ってもいいと思いますが、これはあくまでも「読解力を問う問題」なので、英語力は関係ありません。「Alexandraの愛称はAlex以外にもあるだろう!」というツッコミを入れている方はもう訳が分かりませんAlexandraの愛称について知識を問うている問題ではないのですから、ここでは全く関係のない事柄です。

また、「中学生だから『愛称』の意味が分からなかったのではないか?」という擁護意見もお見かけしましたが、この文章の構造上、「愛称」という言葉の意味が分からなくても問題ありませんよね? 「愛称」という言葉を特に意味のない「B」という言葉に置き換えたとしても、設問全体には影響がありません。ぶっちゃけ文中及び設問の全ての名詞を別の言葉(記号など)に置き換えたとしても意味は通じてしまいますね。*2

「引っ掛け」というご意見についても、この教科書の一文が「良い文章」だとは思いませんが、「悪い文章」だとも思いません。実に普通です。文章を区切らずに「頭でっかち」になっている感は否めませんが、文法的に間違っているわけではありませんし、それこそ「読解力を問う」のには丁度よい文章かと思います(後述)。

念の為、普通に解いてみる

「ごちゃごちゃ言う前にお前本当にちゃんと問題解けるのか!?」と言われそうなので、簡単に書いておくこととします。

Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。

まず、この「教科書の一文」で書かれている事柄を抜き出して、個別の文に分解するとわかりやすいかと思います。この文章の主語は「Alex」であり、その後の三つの要素にかかっている事が分かります。それに従って分解してみると、

  • Alexは男性にも女性にも使われる名前
  • Alexは女性の名Alexandraの愛称である
  • Alexは男性の名Alexanderの愛称でもある

となりますね。

そして穴埋め文章と選択肢は、

Alexandraの愛称は()である


A.Alex
B.Alexander
C.男性
D.女性

ですから、もうこの時点で分解した二番目の要素と内容が一致する「A」が答えであることが分かります。四択問題なので、たとえ予め「Alex」以外にAlexandraの愛称を知っていたとしても、迷う余地はないはずです。*3

こうやって分解してみると、実に単純な文章であることがわかります。「悪文」と仰るご意見も多いのですが、むしろ文章としては簡単な部類に入るのではないでしょうか? この程度の文章を「難しい」とか「悪文」と言ってしまう方がいる事自体に、危機感を覚えてしまいます。それとも、そういうご意見の方々は、よほど「綺麗な文章」を書ける方なのでしょうか……。

追記:ブクマコメへの返信

「子供の読解力が危ない」という話題で、むしろネット民の読解力の危うさが露呈してしまったお話 - 14 Til I Die

とはいえ普通に悪文だと思いますが。自分で書いて一晩寝かせて見直したら書き直すレベル。ましてや教科書、何人もの手が入っているはずなんだけどなぁ。

2017/02/09 03:24
b.hatena.ne.jp

結局のところ、そのように「文章側に問題がある」という話にしてしまうと、「読解力の危機」という本題からどんどんと離れていってしまうだけなのではないかと思います。

そもそも、「読解力」とは既にある文章を読み解くのに必要な能力です。世の中に溢れているのが「綺麗な文章」だけであれば何も問題は無いのですが、現実はそうではありません。実に様々な形の文章が「既にある」世の中だからこそ、読解力というものが必要になってくるのではないでしょうか?
世の悪文と呼ばれるものを、全て駆逐できるのならば話は別でしょうが、それはまず不可能なことですし、読解力を試すテストで「癖の強い」文章を使うことは、何もおかしな話ではありません。*4


また、ある方が「悪文」と断じた文章が、別の方にとっては「味のある文章」になることだってあります。高名な文豪の作品の中でも、中々にトリッキーな文章に出会うことは多々あります。そういった個性の強い文章達と、楽しく付き合っていく能力の根幹となるのが、「読解力」というものではないでしょうか。


何か追加でご意見などがあれば、コメント欄に。どうぞお気軽に。



日本語練習帳 (岩波新書)

日本語練習帳 (岩波新書)

*1:実際、元の新聞記事(読売新聞 2017/1/30付 朝刊)を読むと、これが各科目のテストではなく「読解力を測る為に行われたテスト」であることが分かる。

*2:暇な方はぜひお試しください。私はやりません。

*3:もしこれが自由回答なのだったら、設問側が悪いという意見も筋が通ってきますが、今回のケースには当てはまりません。

*4:もちろんその文章が文法・語意上の間違いが多いものならば論外ですが。