若い人は知らない昔のインターネットの話を少しだけ
いつもながら小島アジコさんは、この手のネタを書かせたら切れ味が有りすぎて一部「年寄り」は「アイタタタ」となってしまいますね。
私も身に覚えがありすぎて、苦笑いしながら読んでいましたが、ブックマークでも色々とツッコまれているように、当時を知らない方には少々補足が必要な話題でもあるな、と感じましたので、勝手に補足(しかも手抜き)。
当時のインターネット回線は64kbs?
マンガの中にも有るように、デジタル回線であるISDNは64kbpsでしたが、いわゆる普通の電話回線(アナログ回線)は、当時の最速のモデムでも56kbpsでした。ISDN回線を使うには別途工事が必要でしたので、ある程度お金に余裕の有る方でないとISDNは使えませんでした。*1
「64kbpsと56kbpsでは大して速度差が無いのでは?」と昔を知らない方は思われるかもしれませんが、小島さんのマンガにも有るように、テキストだけで構成されているwebサイトでも全表示されるまでに数十秒から数分必要だった時代ですので、中々どうして馬鹿にできない差があったんです。
更に言えば、ISDNは仕様通りの速度がほぼ出る回線でしたが、アナログ回線の方は通信が安定しないので、実際には56kbps出ない事も多く、そう言った意味でもISDNは中々の優位性を誇っていました。*2
なお、上記記事では何故か、ビットとバイトが混同されていますが、回線速度の方は「ビット」単位、画像などのファイルサイズは「バイト」単位(ビットの8倍)です。なので、64kbpsの回線の場合、「一秒間に8キロバイト(KB)」の転送速度となります。
そしてその後、99年頃に最初のADSL業者がサービスを開始し、翌年にはNTTが、そして2001年にはYahoo!BBがサービスを開始したことで、一気にブロードバンド時代が始まっていきました。単位がkbpsから一気にMbpsに変わった衝撃は今でも忘れられません。*3
……ちなみに、ADSLを導入するにはISDN回線をアナログ回線に戻す必要があったので、「ISDN選民」の方々は余計な出費を支払った、等という微笑ましい(?)エピソードも。*4
昔は広告を貼ると怒られた?
これは界隈によって少々状況が違ったでしょうが、90年代の個人Webサイトは、アニメやらゲーム、マンガ、もしくは特定のバンドなどの「ファンサイト」が一定以上の割合を占めていました。ですので、そういったファンサイトで広告を貼ってしまうと「ファン活動なのに収益を得るとはけしからん!」という風潮があったのです。
同じような風潮として「(アニメなどの)画像キャプチャはNG」というものもありました。ようは、今もよりもむしろ著作権意識が高かった、という事ですね。当時の個人サイト管理人に、現在のtwitterなどの状況を見せたら、発狂するかもしれません(苦笑)。
テキストサイト界隈で広告表示が嫌われたのも、小島さんが仰るような「サイトが重くなる」という理由もあったのでしょうが、所謂「売文」を嫌う傾向も手伝っていたと記憶しています。
今でこそ「嫌儲」という言葉があるようですが、概念自体は本邦でのインターネット黎明期に既に存在していたわけです。それこそ、2ちゃんねるが開設されるよりも以前から、そういった傾向は存在していました。
また、当時の個人サイトの殆どは、無料スペースかプロバイダの会員向けサーバーに設置されていました。無料スペースは、そもそも運営側の用意した広告が表示されましたので当然自前の広告はNG、一部のプロバイダも「商用利用はNG」として広告の設置を禁止している場合があったと記憶しています。*5
自前の広告を設置できる人間が限られていた、というのも広告が嫌われた一因であったのかもしれませんね。
更に言えば、当時から所謂アダルトサイトやアングラサイトは存在していて、そういったサイトは広告画像がベタベタと貼られているのが大概でした。なので、広告がたくさん貼ってあるとアダルトやアングラサイトっぽくなるので忌避された、という向きもあったのかも。
かく言う私も、ある時点までは「絶対に広告貼らないマン」でしたが、いつの頃からか普通にAmazonアフィリエイトを利用するようになっていました。ちょうど自宅がブロードバンド化してしばらくした辺りからだったと記憶しているので、ブロードバンドの普及が個人の広告利用を促進した、という側面は確かにあるのかもしれません。
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