センス・オブ・ワンダー
とある知人の話
その人は美術系(絵)の才能に恵まれていました。小さな頃から賞をもらったりもしていて、きちんと技術を磨けばそちらの道に進む事も出来たはず、と周りは思っているのですが、本人は「自分には才能がない」と頑なにそちらの道に進む事をせず、結局普通に文系の大学に進学、就職も美術とは全く関係ない方面に落ち着きました。
そんな人ですが、やはり絵画やCGに対する審美眼は凄まじく、やれ構図がどうだとかタッチがどうだとか、「その作品への専門家からの評価」をほぼ正確になぞる事ができ、絵心の欠片も無い私からすればうらやましいことこの上ない才能の持ち主でした。
しかしながら、その人は映画などを観た時に、物語のあらすじを追うことは出来ても登場人物の感情の機微や所謂「行間」のようなものを読むことが出来ません。同じ映画を観た場合など、感想を言い合うと食い違う事が多々あります。
「なんであそこであの女が泣いたのか分からない」
「え? そんなシーンあった?」
なんて質問をよく受けたものです。
物凄い端的な例を出しますと、「スターウォーズ エピソードVI ジェダイの帰還」でルークが皇帝に力で挑む事をせず父親の良心を信じて彼に必死に呼びかけるシーンに対する感想でしょうか。あのシーンに対してその人は、
「ルークはなんで戦わないで『父さん、助けて!』とか情けなくのた打ち回ってんの? 弱っ(笑)」
でした。
……お分かりいただけたでしょうか?
その人と私は同じような環境で育ちました。でも、同じものを見ていても、違う理解をしてしまう。生まれ持ったセンスという名の溝は、もしかしたら一生埋まらないものなのかもしれません。
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