14 Til I Die

消されるな、この想い

ミステリレビュー「煙か土か食い物」 著:舞城王太郎

煙か土か食い物 (講談社文庫)

煙か土か食い物 (講談社文庫)

著者デビュー作。

 小学校の作文に出しても添削の嵐になるであろう程に体裁の整っていない文体。アクの強すぎる主人公と登場人物。読者を置いてけぼりにするかのような、突飛かつスピーディーな展開。
 並の作家がこんな小説を書いたなら、本を破り捨てた上で焼却しその灰を出版社に送りつけている所だが、そうはならない。そうはさせない「筆圧」が伝わってくる、それが舞城王太郎という作家の作品なのだ。
 いきなり主人公が事件の法則を見破ってしまうという定石外の展開。存在自体がある種のユーモアと化している名探偵。現実離れした個性を持った人々。用意された結末。改めて言葉にしてみれば子供だましにしかなりえないそれらの要素が、作中においては見事な「実弾」として成り立つというこの矛盾。
 そして一見支離滅裂な物語から伝わってくる作者の明確なメッセージ――「家族愛」。
 「鬼才」という言葉を感じさせてくれる稀有な作品。

評価:★★★★☆

(初稿:2005/03/24)