14 Til I Die

消されるな、この想い

ミステリレビュー「水車館の殺人」 著:綾辻行人

水車館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

水車館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

「館」シリーズ第2弾。

 「いくらなんでもそれはバレるだろう」と、本作を読んだミステリ好きの方々は口を揃えてそう言う。それについては私も同意であり、そういった意味では本作はあまり出来の良いミステリではないかもしれない。が、私的には本作の魅力はそういった部分とはまた別の所にある、と感じた。
 水車をシンボルとした奇妙な館。車椅子に乗った仮面の主と、幽閉同然の境遇にあるその幼な妻。怪しげな客達、そして一年前に起こった凄惨な殺人……。そういった暗澹たる雰囲気に、後半には更に淫靡なそれが加えられる。これは、ミステリというよりは「怪奇小説」若しくは「幻想小説」の類に入る作品だろう。
 そういった視点から本作を眺めれば、あの結末について納得がいかない方にも、幾許かの了解が得られるのではないだろうか。

評価:★★★☆☆

(初稿:2004/08/09)