14 Til I Die

消されるな、この想い

ミステリレビュー「魍魎の匣」 著:京極夏彦

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

京極堂」シリーズ第二弾。日本推理作家協会賞受賞

 ――匣の中には、綺麗な娘がぴつたりとはいってゐた。

 京極堂シリーズの魅力は、ファンタスティックな真相、京極堂の絶妙な語り口、そしてそれぞれの登場人物が生き生きと動き回り物語を編み上げる様、の三つに集約されていると感じる。特に本作では、登場人物の一人、木場修が主人公と言っても過言ではない大立ち回りを見せてくれる。全体的にコミカルさこそ漂う木場の奮闘振りだが、むしろそれが木場というキャラクターに命を吹き込んでいるように感じられる。ここまで登場人物を魅力的に描き上げられる作家というのは、稀有な存在ではなかろうか。
 本作の真相は、前作「姑獲鳥の夏」に比べると大人しく、途中で気付いてしまった読者も多かった事だろうが、幻想・怪奇小説の色はより濃くなり、一つの作品としては恐るべき完成度を誇っている。
 「シリーズナンバー1」の称号を与える読者が多いことも理解できる。

評価:★★★★★

(初稿:2004/09/02)