14 Til I Die

消されるな、この想い

JASRACが「音楽教室からの著作権料徴収」について、正式に文化庁へ届け出

headlines.yahoo.co.jp
日本の音楽を全力で衰退させる協会ことJASRAC様が、各所の反対意見に全く耳を貸さず、愚行を押し通そうとしているようです。


本件については、上記ニュースに対するはてなブックマーク上での反応を見ていても、事の本質というか重大性を分かってない方が多いようで暗澹たる気持ちになってしまいます。

そもそも今回の徴収は、「JASRAC管理楽曲を教材として使用しているなら使用料を徴収する」という話ではありません
何と、「音楽教室で先生が生徒の前で楽曲を演奏する」のは、「生徒という『公衆』の前で『演奏』しているのだから『演奏権』の許諾が必要である」という無茶苦茶な論理……。
別に音楽教室での先生の演奏は、それを主たる目的としたものではないので上演行為ですらありませんし、教室生徒は特定多数ですから概ね不特定多数のことを指し示す「公衆」とイコールなのか? という疑問が……。*1この時点でもうかなり無理矢理感が漂います。


しかも、今回主な徴収対象として半ば名指しされている「ヤマハ音楽教室」は「一般財団法人ヤマハ音楽振興会」という非営利団体が母体となった音楽教室です。*2非営利という事は、「楽曲を使用して利益を得ている」訳ではないのですから、そもそも徴収の根拠が怪しくなってきますが……*3JASRAC側はこんな驚くべき主張をされています。

 関係者は「受講料を取ってますし、教育の一環とは違う。大手楽器メーカーにとって、音楽教室は楽器を売るためのビジネスモデルにもなっている」と説明。個人経営の教室も一部対象とし、音大や専門学校は「当分の間は保留」とした。
楽器メーカー運営のピアノ教室 JASRACが著作権料を徴収へ/芸能/デイリースポーツ online

直接利益は得ていなくても、関係団体である楽器メーカーが結果として利益を得ているのだから徴収対象である」と言っているのです……。拡大解釈以外の何物でもないでしょう。受講料云々の件についてはまだ筋が通っている(実際ヤマハフランチャイズにも営利団体があるはず)のですが、「大手楽器メーカー」等と名指しして言及している所を見るに、はじめからヤマハ音楽振興会を標的として想定していることが伺えます。

更に言えば、今回のJASRACの横暴に対し、先陣に立って異を唱えているヤマハ音楽教室の場合、その教材の多くがオリジナルの楽曲を使用しています。現代ポップスなどでJASRAC管理楽曲を習う事もあるでしょうが、それもカリキュラム全体から見れば少数のようです。
にも拘らず、ヤマハ音楽教室が全力でJASRACと戦う姿勢を見せているのは、過去にJASRACが度重なる拡大解釈の連発により、その徴収範囲を野放図に広げてきた事への危機感が根底にあるからでしょう。上記関係者コメントで「保留」とされている音大や専門学校も、その内JASRACの餌食となることは明白なのですから。

一応注釈の為追記

上記の書き方ですと、じゃあ営利目的の音楽教室はNGでは? と等と本記事の論旨を読めない方がツッコんできそうなので、念のため付け加えておくと、たとえ営利目的の音楽教室であっても、先生(講師)の演奏は「演奏目的」なのか? という問題があります(上記)。「技術の習得」が主、「演奏」は従であり、一から十まで全部演奏することも考えにくい中、「演奏権」を適用してしまうと、今後様々な分野での音楽活動に支障が出るのではないか? という危惧が根底にあります。
反面「●●(曲名)を弾けるように教育します!」等という宣伝文句を謳っている教室があったら、これは楽曲が主になるでしょうから怒られても仕方ないんじゃないの? とも思いますが(苦笑)。
どちらにしろ司法の冷静な判断を待ちたいところです。JASRACの主張が認められれば、音楽教育の現場から柔軟性が失われることは必定でしょう。



過去に個人MIDIサイトなどが駆逐された時以上の悪夢が、今まさに起ころうとしているのです……。

sumida.hatenablog.com

追記

id:hankatsuu さんからブックマークでコメント頂きました。ありがとうございます。

はてなブックマーク - 「音楽教室からも著作権料」正式発表=JASRAC、文化庁に届け出 (時事通信) - Yahoo!ニュース

id:sumida ヤマハ音楽教室について非営利かどうかの論点は今後クローズアップされるでしょう/オリジナル教材のみの講座は対象から外すことができるわけで、売上の2.5%からは大幅に少なくなりますね/※しました

2017/06/07 23:12
b.hatena.ne.jp
ヤマハ音楽教室が非営利か営利か問題については、上記の通りJASRAC関係者(誰だろう?)が、母体である楽器メーカーが利益を得ているのだから徴収対象である旨の考えを表明しているし、当のヤマハ音楽教室が代表となって裁判を起こす宣言をしているので、既にJASRAC側では「結論が出ている」問題だと思われます。

『オリジナル教材のみのコースは対象から外すことができる』とはおっしゃいますが、過去のJASRACの徴収体制を見るに、恐るべきどんぶり勘定が行われることは明白かと思われます……。恐らくご存知かと思いますが、彼等は管理対象外の楽曲でさえあわよくば徴収しようとしますから……。web上には、アーティストの方々が味わった地獄のようなJASRAC徴収問題の記録がゴロゴロしていますので、今更説明する必要もないかと。
一度JASRACの言う事を聞いてしまえば、そこからは更なる拡大解釈地獄が始まるのです……。

他にも何かございましたら、お気軽にコメント欄へ。

再追記

コメント欄で教えていただいた記事がダイヤモンド・オンラインにしては中々興味深いので張ってきます。
diamond.jp
JASRACを批判するのは大いに結構ですが、著作権法などを無視して批判してもJASRACの反論の燃料にされるだけですので、最低限の知識は得て置いて損はないと思われます。

補足:そもそも論として

何故、もっと子供の多かった、習い事をさせる余裕があった時代に徴収を行わなかったのか? という問題もあります。著作権法の関連部分が昨日今日改正されたわけでもありません。
一説にはCDの売上が落ち込み、音楽業界全体の収益がシュリンクしているから、「取れるところから取ることで著作権者への分配金を確保したい」という主張がJASRAC内にあるそうですが、酷いダブルスタンダードです。
CDの売上が落ちようが落ちまいが、JASRACの主張に則れば、音楽教室での先生の演奏は演奏権に抵触するはずです。今更になって徴収を始めた理由、今までやらなかった理由について、あまりにも根拠薄弱なのではないでしょうか? むしろ、このまま音楽教室からの徴収が是とされた場合、権利者の方々は「今まで取るべきところから取ってこなかった」とJASARCを非難するべきではないでしょうか

だれが「音楽」を殺すのか? (NT2X)

だれが「音楽」を殺すのか? (NT2X)

*1:この点は、「再追記」に掲載した記事で、「生徒は「公衆」といえるというのが従来の裁判所の理解です」という記述もあり。私の中の認識と大分ずれているようです。実際の裁判を待ちたいと思います。

*2:追記:教室自体はヤマハの他の団体が運営している場合もあるが、講師自体は財団からの業務委託なので、そこがどう判断されるか? という点も興味深い。

*3:徴収対象は「教室」であり、この辺り書き方に問題がありましたので打ち消し線入れておきます。