謹賀新年
ここ数年、経済的にも精神的にも不安定な生活を送っている為に無事2016年を迎えられるか心配でしたが、新年早々のど風邪をやらかした以外は平穏な元旦を過ごせております。皆様におかれましては、幸多き一年となることをお祈りいたします。
今年も本ブログは至極マイペース、ネット上での話題への言及や「ミステリレビュー」をはじめとする過去にwebサイトで書いた記事の再掲載などを、気が向いた時に投稿するというスタンスで運営してまいります。ふと思い出したときなどに足を運んで頂ければ幸いです。
ミステリレビューについてはストックがまだそれなりにありますので、月に4本以上を目安に再投稿しつつ、読了済みながらも過去サイトには掲載しなかったものもちょこちょこと書いていこうかと思います。
メインブログ「たこわさ」の方は相変わらず週1~3程度のペースで漫画・アニメ・ゲームの独りよがりな感想を垂れ流しております。頭の気の毒な中年オタクを観察なさりたい方にはお勧めですのでどうぞご贔屓のほどを(などと新年早々安易な自虐ネタをかましつつ終了)。
ミステリレビュー「御手洗潔の挨拶」 著:島田荘司
- 作者: 島田荘司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1991/07/04
- メディア: 文庫
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「御手洗潔」シリーズの短編集
島田荘司という方は、とにかく「大掛かりなトリック」を描く事が大好きなようで、そういった類のミステリを好む方にとっては安心して読める作家といえるだろう。だが、「本格の匂い」を強く求める読者には、少々物足りないのも事実であろう。「本格」というには 「雰囲気」が足りない。
しかしながら、本書に収録された短編はいずれも物語として単純に楽しめ、トリックだけを誇張した不出来なミステリ作品とは一味違う。「本格ミステリ」ではなく「本格的なミステリ」とでも言えばいいだろうか。
私的には「紫電改研究保存会」がお気に入りの作品。
評価:★★★☆☆
(初稿:2004/08/21)
ミステリレビュー「慟哭」 著:貫井徳郎
- 作者: 貫井徳郎
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1999/03
- メディア: 文庫
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さて、肝心要のミステリとしての魅力だが、全体の三分の一までは不満無く楽しめるものの、残念ながらそれ以降の部分は凡庸な作品に終わってしまっているように感じた。読者のミスリードを誘う本作のメイントリックの手法は、余程の技巧を駆使しない限りは一般的なミステリ読みに疑念を差し挟む余地を与えてしまい、「読者を心地よく騙す」事は非常に難しい。
結末についても、メイントリックに見事に「騙された」人間ならば衝撃をもって受け止められるだろうが、途中で気付いてしまった人間にはある種の居心地の悪さを残すばかり。「驚愕の二段オチ」が欲しかった所だ。
とはいえ、作品全体の完成度は、新人のそれを遥かに凌駕しており、作者の今後の作品に大いなる期待を抱かせる物なのだが。*1
評価:★★☆☆☆
(初稿:2005/01/09)
Kindle版も有り。
- 作者: 貫井徳郎
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2012/10/25
- メディア: Kindle版
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ミステリレビュー「異邦の騎士」 著:島田荘司
- 作者: 島田荘司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1991/12
- メディア: 文庫
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全ての記憶を失ってしまった男。自分が何者かも分からぬ内に、街で出会った女性と幸せな生活を始める。ひょんな事から知り合った占い師・御手洗潔との交流も深まっていき、穏やかな日々が続くかと思われた中、次第に明らかになっていく自らの過去には凄惨な出来事が――?
色々と都合よく事が動き過ぎている部分が多く、伏線かと思いきやその後全く何の説明もされないエピソードも存在するなど、完成度という点では決して褒められたものではない本作だが、そういったマイナス要素を差し引いても優秀な娯楽作品に違いない。
残念な点は、御手洗シリーズの愛読者には、すぐに本作がどのような結末を迎えるのかが予測できてしまう事だろうか。更に言えば、御手洗シリーズをある程度通読していないと、本作の魅力が半減してしまうきらいもあり、物語以外の部分でジレンマを感じさせる作品とも言える。
私的には、御手洗シリーズの中では最も好きな作品だが。
評価:★★★★☆
(初稿:2004/08/21)
改訂完全版の方はKindleストアでも販売している模様。
- 作者: 島田荘司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/10/31
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ミステリレビュー「鉄鼠の檻」 著:京極夏彦
- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/09/06
- メディア: 文庫
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謎の巨刹・明慧寺。その強固な結界に訪問者が訪れた時から、仏弟子たちが次々と惨殺される事件が起こり始め……。京極堂をして「分が悪すぎる」と言わしめるこの怪異に、果たして終わりは訪れるのだろうか?
前作までの京極堂シリーズは、京極堂による「憑物落し」によって怪異を解き明かし、幻想に囚われていた人々を現実の世界に引き戻す事によって解決を見てきた。もちろん、本作においてもその手法は健在なのだが、少々毛色が違うように見受けられる。
本作においては、確かに京極堂による「憑物落し」が行われ、怪異は解き明かされる事になる。だが、それでもなお「幻想」がどこかに生き延びていて、余韻を残すのだ。そしてこの「幻想の余韻」は本作より後のシリーズにおいて、より顕著になっていく傾向にある。
「本格」としては今一歩サプライズが足りない感があるが、本作が醸し出す「結界」という世界観は圧巻。読者としても、ここは「作品」という名の「結界」に囚われた気持ちで読んでみると、より一層楽しめる作品だろう。
評価:★★★★★
(初稿:2004/10/30)
ミステリレビュー「放課後」 著:東野圭吾
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1988/07/07
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高校内で発生した密室殺人事件、その謎を追う高校教師、女生徒達の怪しげな振る舞い……。「学園ミステリ」を「本格」の方向へ少しだけ軌道修正するとこのようになる、といった見本のような作品。
トリック、ドラマ展開ともに破綻と言えるようなミスは無く、基本に忠実なミステリに仕上がっている。が、裏を返せばミステリとしての「爆発力」に欠ける、とも言える。もっとも、本作は人物描写とそれに伴う物語の流れが支持されているようなので、一概に欠点とは言えないのだが。
「結末」については、唐突に過ぎるように思えた。確かに、伏線(というか余りにもあからさまに「隠された事実」を示した描写)はきっちりと仕込んであったが、何故「彼ら」がそこまで極端な行動に出てしまったのか、その理由が少々希薄なように感じた。
評価:★★★☆☆
(初稿:2004/08/02)
ミステリレビュー「暗黒館の殺人」 著:綾辻行人
- 作者: 綾辻行人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/10/16
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- 作者: 綾辻行人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/10/16
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- 作者: 綾辻行人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/11/15
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- 作者: 綾辻行人
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現在の所、シリーズ一の大長編。
本作を端的に評価するならば、次の二つに集約される事だろう。即ち、「『館』シリーズの最重要作品」と「ミステリとしては凡庸」に。
もちろん、本作のトリックや世界観について「凡庸なミステリ」であると主張するつもりはない。その二つについては、「綾辻行人以外には体現できない極上の世界」であると言えるだろう。しかしながら、本作では真相解明までの流れが冗長に過ぎ、またあからさま過ぎる伏線の数々によって、「たった一言で世界がひっくり返る」類の「心地よい驚き」を感じる事が困難になってしまっている(もし、あの人物の素性について「騙された!」と感じた人がいたならば、失礼ながら洞察力不足と言わざるを得ない)。
読者によっては、「人形館の殺人」の時と同じ「シリーズ作品が故の失敗」を感じる事になるかもしれない。また、あまりにも幻想小説に寄り過ぎた本作について、拒否反応を示す方もいるかもしれない。
しかしながら、本作を「シリーズの線引き的作品」と割り切ってしまうならば、決して非難された出来とまでは言えないという所が、本作の評価を困難にしている。どちらにしろ、シリーズの読者以外にはお奨めできない。
評価:★★★☆☆
(初稿:2004/09/16)
- 作者: 綾辻行人
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