14 Til I Die

消されるな、この想い

HDDレコーダーの録画整理でダビング作業をしていたらいつの間にか深夜になってしかもまだ終わらないので息抜きに録画用ディスクについて語ってみる

パナソニック 録画用2倍速ブルーレイ片面2層50GB(書換型)10枚 LM-BE50C10BP

いい歳ブッこいたアニメオタクなもので、愛用のHDDレコーダーは毎日のようにテレビアニメの予約録画を実行し、番組改変期近くともなると容量が足りなくなってきて慌てて消したりダビングしたりという、人生において恐らくは無駄極まりない作業に追われる生活を送っております。今期は面白い作品が多い事もあり、アニメだけでも20作以上、ドラマやらドキュメンタリーやら含めると30本以上の番組を毎週録画している事になり、「あれ、俺こんなにテレビっ子だったっけ?」等と思いながら録画を消化する日々。録画数が多すぎて最早観る為に録画しているというよりは、録画したものを消化する為に観ているといった様相を呈しておりまして我ながら一体何をやっているのだろうと考える事もございます――が、それはともかくとして。

HDDに録画した番組というのは、恐らく大半の方は「観たら消す」事になっているのではないかと思いますが、私の場合は生来の貧乏性故か、アニメでもドキュメンタリーでも少しでも気に入ったものはせっせとダビングして保存しておく事が多かったりします。「微妙だったな」というアニメでも、お気に入りのエピソードやキャラクターの一つでもあればダビングして保存してしまう為、アニメをダビングしたBlu-rayディスクだけでも結構シャレにならない数になりつつあります。流石に最近は置き場所に困るレベルになってきたので、数年経って一回も観直さなかった作品は上書きするようにしていますが……例えば、先日などは「革命機ヴァルヴレイヴ」の録画を全部消しましたが、あんな微妙アニメでもいざ消すとなると僅かばかりの寂しさが湧いてくるものですね。



HDDレコーダーからBDへのダビングというと、最近は書き換え可能なBD-REが主流になっているかと思います。一回のみ録画可能なBD-Rの方が7割程度価格が安いのですが、逆に言えば3割程度上乗せするだけで書き換えが出来る訳で、その点が魅力になっているようです。私は更に、収納スペースを少しでも節約したいのでDL(二層)の50GBディスクを愛用しています。DVD時代はまだまだ割高だったDLディスクですが、最近は容量辺り単価でも一層ディスクと遜色ない価格まで落ちていて、コストパフォーマンスの良さを実感できますね。

ただ、安ければいいというものでもなく、BD-REを購入する際はある程度クオリティを重視した方が無難です。流石にCD-R時代のような粗悪品こそ無くなりましたが、それでもやっぱり激安メディアには未だに品質のばらつきがある様子。ただでさえダビング(コピー)回数が制限されているデジタル放送ですから、失敗しては目も当てられません。
私がBD-REディスクを買う際に気を付けているのは以下の三点。

一番目は上述の通り、絶対とは言えませんが国産品の方が品質のばらつきは少ない傾向にあります。その証拠、ではないですが、国産品と海外産では値段がかなり違います。大事なデータですから、必要最低限の品質位は確保したい所です。
二番目は意外に思う方もいるかもしれませんが、インクジェットプリンター対応のレーベル面というのはその性質上、水分を結構含んでしまうんです。その結果何が起こるかというと――表面が「べたつく」んですよね。ちょっと油断してディスクとディスクを重ねてしまった場合に、お互いにくっついてしまうなんて事も。もちろん、扱い方に気を付けていれば防げる事故ですが。
三番目は、以前話題になった「Blu-rayディスクを不織布ケースにしまっていたら読み取り不能になった」件を知っている方はピンとくるかもしれません。詳しくは「ブルーレイディスクの正しい保管方法 - サンワサプライ株式会社」等を読んで頂くと分かりますが、BDはDVDよりも保護層が薄いので、ちょっとした傷や不織布の凹凸の「跡」が付くだけでも読み取り不能になってしまう場合があり、個別のケースに入れて保管した方が安全なんですね。スピンドルケースなどで買った場合も個別保管できるケースを別途購入すれば済む話のように思えますが……上述のインクジェット対応のディスクをスピンドルケースで購入した場合、しばらく置いておくと実はえらい事になったり。

――と、多少知識がある人からすれば「何をいまさら」な事ばかり書いてきましたが、丁度ディスク一枚分のダビングが終わった所なので今回はこの辺りで。*1

*1:オチはない。

ミステリレビュー「幽霊刑事」 著:有栖川有栖

幽霊刑事 (講談社文庫)

幽霊刑事 (講談社文庫)

 フィアンセを残し凶弾に斃れた刑事・神崎。が、何の因果か幽霊となってこの世に舞い戻ってしまった。
「何故自分は射殺されなければならなかったのか?」
犯人である上司の身辺を探ろうとした矢先、今度はその上司が密室で何者かに殺され……。

 読んでいて、「これは我孫子武丸の作品じゃないよな?」と何度も確認してしまったほど、軽快でありそれでいて哀愁漂う作風が堂に入っている。確かに、有栖川作品はある種の軽快さを持ち合わせてはいたが、本作のそれは圧倒的にレベルが高い仕上がりになっている。
 氏お得意のクローズドサークルにも似た、誰にも認識してもらえない「幽霊」というシチュエーションが見事にはまっている。ともすれば漫画的なナンセンスミステリに落ち着いてしまいそうな題材だが、本作はきちんと「折り目正しいミステリ」に仕上がっており、ストーリー展開も秀逸。
 難点は、謎解き部分が結末の性急さに引かれて萎縮している事か。
評価:★★★★☆
(初稿:2004/08/18)

ミステリレビュー「半落ち」 著:横山秀夫

半落ち (講談社文庫)

半落ち (講談社文庫)

映画「半落ち」原作。

 アルツハイマーを患った妻を、その手にかけた現職警察官。自首し、犯行の全てを自供した彼だったが、犯行後の二日間の行動については黙して語らなかった。その「空白の二日間」に一体何があったのか?

 謎らしい謎が始めから最後まで「空白の二日間」一点に絞られるため、ともすれば短編程度のボリュームにしかなりえない題材だが、そこは流石に横山秀夫複数の人物にそれぞれの視点で事件を語らせるという手法が堂に入っていて、中編として間延びせずに良くまとまっている。それぞれの登場人物も、ステレオタイプではあるがそれぞれにキャラが立っている。
 しかしながら、ミステリ・物語としての出来となると少々物足りない。結局の所、「空白の二日間」以外の謎は存在せず、その謎についても折り目正し過ぎるほどにあからさまな伏線が多数張られているため、意外性に乏しい。物語の流れも、複数の人物の視点に立っている割には、どれもこれも似たような展開を迎え、予定調和の域を出ない。
 予定調和ゆえに、その結末は非常に「綺麗」である。しかし、「尊厳死」や「難病」という奇麗事だけではない現実を題材にした話としては、「綺麗」過ぎる。そのため、全体的にリアリティ――あくまでも「創作」中のリアリティだが――漂う作品なのに、最後の最後に待ち受けるのがファンタジーという、なんとも居心地の悪い仕上がりになってしまっている。
 「お涙頂戴」モノと紙一重か。
評価:★★☆☆☆
(初稿:2005/10/18)

半落ち

半落ち

ミステリレビュー「御手洗潔のダンス」 著:島田荘司

御手洗潔のダンス (講談社文庫)

御手洗潔のダンス (講談社文庫)

 短編集。相変わらず安心して読めるレベルであり「流石は島田御大」と言った所だが、どうもこの辺りから御手洗潔ファンには喜ばしく、それ以外の人間には鼻につきそうな描写が増えた感がある。キャラクター小説の風味が増増した、と言えばよいだろうか。
 「シリーズ物」に付きまとうある種の雰囲気が好きになれない方には、あまりお奨めできないかもしれない。シリーズファンならば純粋に楽しめるのだろうが。
評価:★★★☆☆
(初稿:2004/08/24)

ミステリレビュー「ダリの繭」 著:有栖川有栖

ダリの繭 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)

ダリの繭 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)

作家アリスシリーズ。

ダリに心酔する宝石チェーンの社長が変死体で発見された。「繭」を思わせるフロートカプセルの中、自慢のダリ髭を失った状態で。
次々に不可解な点が浮かび上がる事件に、犯罪社会学者・火村英生と推理作家・有栖川有栖が立ち向かう――。

 死体発見の状況からして中々に魅力的な題材に思えるが、作家アリスシリーズの例に漏れず「本格」としての雰囲気は控えめであり、どちらかと言えば火村とアリスの軽快なフットワークとそれが醸し出す展開の面白さが本作の魅力である、という印象を受けた。主役は「謎」ではなくあくまでも火村とアリスなのだ、と。
 そういった意味では実に好き嫌いのはっきり分かれる作品。
評価:★★★☆☆
(初稿:2006年頃)*1

テレビドラマ版から興味を持った方には、角川ビーンズ文庫版をお奨めする。

*1:本編を原作としたテレビドラマの放映に合わせて、旧webサイトでは公開しなかったテキストをサルベージ・改稿した。タイムスタンプが残っていなかったため、日付は省略。

ミステリレビュー「絡新婦の理」 著:京極夏彦

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

京極堂」シリーズ第5弾。

あなたが――蜘蛛だったのですね

 なんとも幻想的な場面から始まる本編は、それが暗示するとおり、シリーズで最も観念的でありまた幻想色が強い。「鉄鼠の檻」とはまた違った意味で「シリーズ随一」との評価が与えられるのも肯ける。
 何者かの張り巡らした「蜘蛛の巣の上」で、登場人物達がいいように動かされるさまは滑稽でもあり、また恐ろしくもある。ただ、あまりにも「予定調和」過ぎるため、登場人物達は何が謎なのかさえも思い当たらず、また探偵たる京極堂が手を下す必要のある部分も極めて少ないため、今までのシリーズにあった「鬱積したモヤモヤを憑物落しによって払われる」感覚が希薄であるかもしれない。
 終盤に近づけば近づくほど、「蜘蛛」が誰なのかがはっきりと分かってくるため、「意外な犯人」的な驚きは薄いだろう。だが、読了後に残る何ともいえない寂寥感こそが、本作の魅力なのだろう。
評価:★★★★☆
(初稿:2005/10/23)

ミステリレビュー「46番目の密室」 著:有栖川有栖

46番目の密室 (講談社文庫)

46番目の密室 (講談社文庫)

 有栖川作品には人気を二分する二つのシリーズ作品が存在する。一つは、「月光ゲーム」を一作目とする大学生・有栖川有栖が主人公である「学生アリス」シリーズ。もう一つは、ミステリ作家・有栖川有栖と犯罪学者・火村英生が活躍する「作家アリス」シリーズであり、本作はそのシリーズに属する。
 さて、肝心の内容だが、表題にある「密室」に対する考察や拘りを期待していると少々肩透かしをくらう。「密室モノ」としてはごく普通の構成と言っても過言では無いだろう。
 全体の出来としては「推理小説」の良いお手本といえるレベル。が、惜しむらくは、新本格特有の、匂い立つようなミステリの雰囲気が殆んど感じられない所だろうか。良い意味でも悪い意味でも「お手本」止まりな作品であり、それは本作以降の「作家アリス」シリーズ全般に言えることなのだが……、詳細は各作品のレビューに譲る事にする。
評価:★★★☆☆
(初稿:2006/05/16)


余談だが、先日「作家アリス」シリーズを原作とするテレビドラマ「臨床犯罪学者 火村英生の推理 」の放送が開始された。イケメン若手俳優に火村とアリスを演じさせている点から見ても、内容は言わずもがな、といったところか。

角川ビーンズ文庫版の表紙からお察しいただきたい。