14 Til I Die

消されるな、この想い

ミステリレビュー「すべてがFになる」 著:森博嗣

すベてがFになる (講談社文庫)

すベてがFになる (講談社文庫)


著者デビュー作。第1回メフィスト賞受賞作品。
 舞台は孤島のハイテク研究所。少女時代より研究所奥深くに隔離状態だった天才工学博士が、何者かに殺害された。謎を解こうと奔走するN大助教授・犀川と女子学生・萌絵だったが……。
 「理系ミステリ」と評される本作。さぞや論理的且つ合理的なトリックとストーリーが展開するのかと思ったら、肩透かしを食らった。
 まず、メインのトリックだが、確かに所々に伏線らしき物が明示してあるが、作品では直接描かれていない部分も考慮に入れると、実行は限りなく不可能に近い。そして、犯人の動機も何やら神がかり的な理由をでっち上げて、「天才的な犯罪方法と動機」のように見せかけようとしているが、その実、論理的根拠も感情的根拠も欠落していると言わざるを得ない。
 また、登場人物が不自然に数々の事実に気が付かなさ過ぎる。いくらなんでも、あれだけ理系の頭が揃っていれば、「F」の意味位は範疇にあるはずだろう。他にも、神の如き読者の視点でなくとも普通に気付くだろう、と言わずにはいられないシーンも多々有り。
 本作が一般向けの文庫ではなく、ティーンズ向けのブランドで出版されていたならば、評価はもう少し違ったかもしれない。そう、これは「本格」ミステリ等ではなく、(悪い意味での)「ライト」ミステリでしかない。

評価:★★☆☆☆

(初稿:2004/08/02)