14 Til I Die

消されるな、この想い

ミステリレビュー「狂骨の夢」著:京極夏彦

文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)

文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)

京極堂」シリーズ第3弾。
 本作は、他の同シリーズ作品に比べると比較的大人しい構成になっている。とは言っても、それはメイントリックがそれほど突飛でない事と、ある方面の知識を持っている人間ならば本編中の謎の一つについて、容易に想像が出来てしまうというだけの事であり、本作は間違いなく優秀作の範疇にあるだろう。
 現れては消える金色の髑髏、山中での謎の集団自決、夫を四度殺した女、幼少の頃に見た淫夢に苦悩する精神科医。「夢か現か幻か」とでも表現するに相応しい怪しげな数々のキーワードは、「仮想戦後ミステリ」とでも呼ぶべき同シリーズの面目躍如といった所か。
 「幻想の世界から京極堂の憑物落しによって現実の世界に引き戻される衝撃」という点では、本作はシリーズでも1,2を争う出来に違いない。
評価:★★★★☆
(初稿:2004/10/30)