14 Til I Die

消されるな、この想い

ミステリレビュー「ルー=ガルー  忌避すべき狼 」 著:京極夏彦

分冊文庫版 ルー=ガルー《忌避すべき狼》(上) (講談社文庫)

分冊文庫版 ルー=ガルー《忌避すべき狼》(上) (講談社文庫)

 京極作品には言ってみれば「はっちゃけた」作品が多いのだが、それにしても本作の「はっちゃけ」振りは他に類を見ない物ではないだろうか。
 舞台は近未来。主人公は14歳の少女達。一般読者から寄せられた未来設定の数々。そのどれもが、「妖怪作家」として知名度を上げてきた京極からは、程遠いようにも感じる。そしてその印象通り、本作は従来の京極作品とは少々毛色の違う仕上がりとなっている。
 とにかく、本作は軽快(というと語弊があるが)なのだ。前向きな少女達や後半部のテンションの高い場面展開、そしてその裏に潜むある種のデリケートさ。一部の方にしか分からない例えで恐縮だが、まるで「我孫子武丸が乗り移ったかのような」作風だ。 名作というよりは怪作、優秀作というよりは問題作、といった評価が本作にはふさわしいだろう。もちろん、褒め言葉として。
評価:★★★★☆
(初稿:2004/09/22)

ルー=ガルー 忌避すべき狼 完全版(1) (KCデラックス エッジ)

ルー=ガルー 忌避すべき狼 完全版(1) (KCデラックス エッジ)

漫画版についてはノーコメント。