14 Til I Die

消されるな、この想い

ミステリレビュー「翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件」 著:麻耶雄嵩

翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)

翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)

※基本的に旧webサイトで公開していたものの再録である拙ミステリレビューだが、本稿は下書きしつつも公開に至らなかったものを、思うところあって加筆修正の上で投稿したものである事を前もって断っておきたい。そういった意味で「初稿」は本日の日付としたが、言うまでもなく本作を読了したのは10年以上前である事も付け加えておく。
 さて、少々ネタバレをしてしまえば本作は大まかに言って「メタミステリ」に分類される作品と言える。古典本格ミステリの様々なエッセンスや、特定作品に向けたオマージュが多用されており、そういった読み方をした場合、所々で失笑*1を禁じ得ない、そんな作品だ――ただし、度を越したミステリマニアにとっては、だが。
 オマージュを意識し過ぎた雰囲気は出来の悪いパロディ以外の何物でもなく、最後に待ち受ける驚天動地の結末については最早ただのギャグにしかなっていない。ネット黎明期に某有名ミステリ系テキストサイトでも鉄板ネタとして取り上げられていた、と言えば一部の方には通りがよいだろうか? 私的には「金田一少年の事件簿*2を読んでいたのにいつの間にか「名探偵コナン」にすり替わっていた位の衝撃だった。
 しかしながら、この作品は新本格の旗手と呼ばれるようなお歴々をはじめとするミステリマニアの方々には概ね評判がいい。まことにミステリマニアとは業の深い生き物であると、ため息を一つ。

評価:★☆☆☆☆
(初稿:2016/1/7)

*1:本来的な、こらえきれない笑いという意味において

*2:誤解のないように注釈しておくと、筆者は「金田一少年~」を「ミステリ漫画」ではなく「ミステリ風漫画」であると思っている。良い意味でも悪い意味でも。