本当に必要な事
男子児童の無事を喜ぶ気持ちはみんな一緒なはずなのに、なぜか殺伐としてしまうブックマークコメント欄に何とも暗澹たる気持ちになります。
かくいう私も、
無事だったって「結果論」で「虐待」をうやむやにしようとしてる奴がいたらそれこそ下衆の極み。/しかし6日間小二が水だけで生存って俄に信じがたい。食料自力で確保したのかね?
http://b.hatena.ne.jp/entry/289240289/comment/sumida
というコメントを投下していて、名指しこそされていませんが一部の方からは「親叩き」の一派として認定されてしまっている節があります。もちろん、私自身にそういった意図は殆どありませんが……。
この事件の根幹にあるのは、「しつけ」と称して山中(山道近く)に7歳児を放置してしまったという虐待に近い行為と、「世間体を気にして」初動の段階で親が「はぐれた」と嘘を吐いた事にあります。*1
その行動の責任については、散々に晒し者になりバッシングされ、恐らくは警察にもある程度追及され、そして我が子の安否が分からぬ不安の数日を過ごしたという時点である程度贖われているものと考えられますし、刑事責任が発生するとしたらそれは司直の仕事でありまた別の話なので、テレビやwebを介して事件を見守っていた人間がとやかく言うべき事ではないでしょう。
ただ、一部のコメントにそもそもの「置き去り」行為を「虐待」と捉えていない、「しつけ」と「無事だった」という免罪符で事態を矮小化するようなニュアンスがあって、それは違うんじゃないかな? という意味を込めて私は上記コメントを投下しました。もし「万が一」の結果になっていた場合も同じことを言えるの? と。親の責任を追及しない事と、事件のあらましから教訓を得る事は矛盾しないはずですし。
例えは悪いですが、炎天下の車内に子供を放置して死なせるような親も、大概の場合それが「虐待」だとは思っていない訳です。「しつけ」と称してマンションのベランダに締め出された男児が転落した事件なんてものも過去にありました。
今回の事件、両親はここまでの大事になるとは全く思っていなかった事が言動の端々から窺えます。男子児童の悪戯に業を煮やしてちょっと怖がらせてやろう程度の思い付きだったのでしょう。
でも、冷静に考えてみれば、山道が近いとはいえ鬱蒼とした山林に――しかも季節柄クマも出没するような場所に――5分程度とは言え子供を置き去りにするという行為の危険性は明らかな訳で。「いなくなった振りをして近くで隠れて見守る」程度ならまだ理解出来ますが、本当に車で走り去られて、悪戯が過ぎるような気性の子供がどんな反応をするか、深く考えなくても分かる事でしょう。
どんな親だって*2、子供のどんな我儘や悪さを無制限に許せるものではありません。時に感情的になる事もあるでしょう。判断力が鈍る時もあるでしょう。そういった時に過ちを犯すリスクを減らす為には、何よりも「どこまでがセーフでどこからがアウトなのか」普段から考えを巡らせ、その基準を「我が事」として自分の骨の髄まで染み込ませておく事が必要なのではないでしょうか。完璧な人間などいないように、完璧な親などいないのですから。
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HDDレコーダーの録画整理でダビング作業をしていたらいつの間にか深夜になってしかもまだ終わらないので息抜きに録画用ディスクについて語ってみる
いい歳ブッこいたアニメオタクなもので、愛用のHDDレコーダーは毎日のようにテレビアニメの予約録画を実行し、番組改変期近くともなると容量が足りなくなってきて慌てて消したりダビングしたりという、人生において恐らくは無駄極まりない作業に追われる生活を送っております。今期は面白い作品が多い事もあり、アニメだけでも20作以上、ドラマやらドキュメンタリーやら含めると30本以上の番組を毎週録画している事になり、「あれ、俺こんなにテレビっ子だったっけ?」等と思いながら録画を消化する日々。録画数が多すぎて最早観る為に録画しているというよりは、録画したものを消化する為に観ているといった様相を呈しておりまして我ながら一体何をやっているのだろうと考える事もございます――が、それはともかくとして。
HDDに録画した番組というのは、恐らく大半の方は「観たら消す」事になっているのではないかと思いますが、私の場合は生来の貧乏性故か、アニメでもドキュメンタリーでも少しでも気に入ったものはせっせとダビングして保存しておく事が多かったりします。「微妙だったな」というアニメでも、お気に入りのエピソードやキャラクターの一つでもあればダビングして保存してしまう為、アニメをダビングしたBlu-rayディスクだけでも結構シャレにならない数になりつつあります。流石に最近は置き場所に困るレベルになってきたので、数年経って一回も観直さなかった作品は上書きするようにしていますが……例えば、先日などは「革命機ヴァルヴレイヴ」の録画を全部消しましたが、あんな微妙アニメでもいざ消すとなると僅かばかりの寂しさが湧いてくるものですね。
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HDDレコーダーからBDへのダビングというと、最近は書き換え可能なBD-REが主流になっているかと思います。一回のみ録画可能なBD-Rの方が7割程度価格が安いのですが、逆に言えば3割程度上乗せするだけで書き換えが出来る訳で、その点が魅力になっているようです。私は更に、収納スペースを少しでも節約したいのでDL(二層)の50GBディスクを愛用しています。DVD時代はまだまだ割高だったDLディスクですが、最近は容量辺り単価でも一層ディスクと遜色ない価格まで落ちていて、コストパフォーマンスの良さを実感できますね。
ただ、安ければいいというものでもなく、BD-REを購入する際はある程度クオリティを重視した方が無難です。流石にCD-R時代のような粗悪品こそ無くなりましたが、それでもやっぱり激安メディアには未だに品質のばらつきがある様子。ただでさえダビング(コピー)回数が制限されているデジタル放送ですから、失敗しては目も当てられません。
私がBD-REディスクを買う際に気を付けているのは以下の三点。
- 大手メーカーの日本製(国産)製品である事。
- レーベル面がインクジェットプリンター対応ではない事
- 個別ケース入りである事
一番目は上述の通り、絶対とは言えませんが国産品の方が品質のばらつきは少ない傾向にあります。その証拠、ではないですが、国産品と海外産では値段がかなり違います。大事なデータですから、必要最低限の品質位は確保したい所です。
二番目は意外に思う方もいるかもしれませんが、インクジェットプリンター対応のレーベル面というのはその性質上、水分を結構含んでしまうんです。その結果何が起こるかというと――表面が「べたつく」んですよね。ちょっと油断してディスクとディスクを重ねてしまった場合に、お互いにくっついてしまうなんて事も。もちろん、扱い方に気を付けていれば防げる事故ですが。
三番目は、以前話題になった「Blu-rayディスクを不織布ケースにしまっていたら読み取り不能になった」件を知っている方はピンとくるかもしれません。詳しくは「ブルーレイディスクの正しい保管方法 - サンワサプライ株式会社」等を読んで頂くと分かりますが、BDはDVDよりも保護層が薄いので、ちょっとした傷や不織布の凹凸の「跡」が付くだけでも読み取り不能になってしまう場合があり、個別のケースに入れて保管した方が安全なんですね。スピンドルケースなどで買った場合も個別保管できるケースを別途購入すれば済む話のように思えますが……上述のインクジェット対応のディスクをスピンドルケースで購入した場合、しばらく置いておくと実はえらい事になったり。
――と、多少知識がある人からすれば「何をいまさら」な事ばかり書いてきましたが、丁度ディスク一枚分のダビングが終わった所なので今回はこの辺りで。*1
*1:オチはない。
ミステリレビュー「幽霊刑事」 著:有栖川有栖
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フィアンセを残し凶弾に斃れた刑事・神崎。が、何の因果か幽霊となってこの世に舞い戻ってしまった。
「何故自分は射殺されなければならなかったのか?」
犯人である上司の身辺を探ろうとした矢先、今度はその上司が密室で何者かに殺され……。
読んでいて、「これは我孫子武丸の作品じゃないよな?」と何度も確認してしまったほど、軽快でありそれでいて哀愁漂う作風が堂に入っている。確かに、有栖川作品はある種の軽快さを持ち合わせてはいたが、本作のそれは圧倒的にレベルが高い仕上がりになっている。
氏お得意のクローズドサークルにも似た、誰にも認識してもらえない「幽霊」というシチュエーションが見事にはまっている。ともすれば漫画的なナンセンスミステリに落ち着いてしまいそうな題材だが、本作はきちんと「折り目正しいミステリ」に仕上がっており、ストーリー展開も秀逸。
難点は、謎解き部分が結末の性急さに引かれて萎縮している事か。
評価:★★★★☆
(初稿:2004/08/18)
ミステリレビュー「半落ち」 著:横山秀夫
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映画「半落ち」原作。
アルツハイマーを患った妻を、その手にかけた現職警察官。自首し、犯行の全てを自供した彼だったが、犯行後の二日間の行動については黙して語らなかった。その「空白の二日間」に一体何があったのか?
謎らしい謎が始めから最後まで「空白の二日間」一点に絞られるため、ともすれば短編程度のボリュームにしかなりえない題材だが、そこは流石に横山秀夫、複数の人物にそれぞれの視点で事件を語らせるという手法が堂に入っていて、中編として間延びせずに良くまとまっている。それぞれの登場人物も、ステレオタイプではあるがそれぞれにキャラが立っている。
しかしながら、ミステリ・物語としての出来となると少々物足りない。結局の所、「空白の二日間」以外の謎は存在せず、その謎についても折り目正し過ぎるほどにあからさまな伏線が多数張られているため、意外性に乏しい。物語の流れも、複数の人物の視点に立っている割には、どれもこれも似たような展開を迎え、予定調和の域を出ない。
予定調和ゆえに、その結末は非常に「綺麗」である。しかし、「尊厳死」や「難病」という奇麗事だけではない現実を題材にした話としては、「綺麗」過ぎる。そのため、全体的にリアリティ――あくまでも「創作」中のリアリティだが――漂う作品なのに、最後の最後に待ち受けるのがファンタジーという、なんとも居心地の悪い仕上がりになってしまっている。
「お涙頂戴」モノと紙一重か。
評価:★★☆☆☆
(初稿:2005/10/18)
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ミステリレビュー「御手洗潔のダンス」 著:島田荘司
- 作者: 島田荘司
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「シリーズ物」に付きまとうある種の雰囲気が好きになれない方には、あまりお奨めできないかもしれない。シリーズファンならば純粋に楽しめるのだろうが。
評価:★★★☆☆
(初稿:2004/08/24)
ミステリレビュー「ダリの繭」 著:有栖川有栖
- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1993/12
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作家アリスシリーズ。
ダリに心酔する宝石チェーンの社長が変死体で発見された。「繭」を思わせるフロートカプセルの中、自慢のダリ髭を失った状態で。
次々に不可解な点が浮かび上がる事件に、犯罪社会学者・火村英生と推理作家・有栖川有栖が立ち向かう――。
死体発見の状況からして中々に魅力的な題材に思えるが、作家アリスシリーズの例に漏れず「本格」としての雰囲気は控えめであり、どちらかと言えば火村とアリスの軽快なフットワークとそれが醸し出す展開の面白さが本作の魅力である、という印象を受けた。主役は「謎」ではなくあくまでも火村とアリスなのだ、と。
そういった意味では実に好き嫌いのはっきり分かれる作品。
評価:★★★☆☆
(初稿:2006年頃)*1
テレビドラマ版から興味を持った方には、角川ビーンズ文庫版をお奨めする。
臨床犯罪学者・火村英生の推理 III ダリの繭(上) (角川ビーンズ文庫)
- 作者: 有栖川有栖,麻々原絵里依
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臨床犯罪学者・火村英生の推理 III ダリの繭(下) (角川ビーンズ文庫)
- 作者: 有栖川有栖,麻々原絵里依
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2013/06/29
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*1:本編を原作としたテレビドラマの放映に合わせて、旧webサイトでは公開しなかったテキストをサルベージ・改稿した。タイムスタンプが残っていなかったため、日付は省略。
ミステリレビュー「絡新婦の理」 著:京極夏彦
- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/09/05
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「京極堂」シリーズ第5弾。
あなたが――蜘蛛だったのですね
なんとも幻想的な場面から始まる本編は、それが暗示するとおり、シリーズで最も観念的でありまた幻想色が強い。「鉄鼠の檻」とはまた違った意味で「シリーズ随一」との評価が与えられるのも肯ける。
何者かの張り巡らした「蜘蛛の巣の上」で、登場人物達がいいように動かされるさまは滑稽でもあり、また恐ろしくもある。ただ、あまりにも「予定調和」過ぎるため、登場人物達は何が謎なのかさえも思い当たらず、また探偵たる京極堂が手を下す必要のある部分も極めて少ないため、今までのシリーズにあった「鬱積したモヤモヤを憑物落しによって払われる」感覚が希薄であるかもしれない。
終盤に近づけば近づくほど、「蜘蛛」が誰なのかがはっきりと分かってくるため、「意外な犯人」的な驚きは薄いだろう。だが、読了後に残る何ともいえない寂寥感こそが、本作の魅力なのだろう。
評価:★★★★☆
(初稿:2005/10/23)
- 作者: 京極夏彦
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