14 Til I Die

消されるな、この想い

ミステリレビュー「天使の囀り」 著:貴志祐介

天使の囀り (角川ホラー文庫)

天使の囀り (角川ホラー文庫)

 ホスピスでの医療に携わる精神科医・北島早苗。彼女の恋人は異常なまでの死恐怖症を抱えていたが、アマゾンでの取材調査からの帰国後は、まるで死に魅せられたかのように性格が豹変し、遂には自殺を遂げてしまう。彼が死の直前に残した「天使の囀りが聴こえる」という言葉が意味するものは一体何なのか?

 「クリムゾンの迷宮」に比べると、型破りではない普通のホラー作品に仕上がっているように感じられる。だが、「親しい人間の豹変と突然の死」という導入は、ホラーとしてもミステリとしても十分魅力的に映る。
 少々ステレオタイプに過ぎるところが欠点といえば欠点だが、そこは作者の力量か、中々の佳作に仕上がっている。
 余談だが、作中に登場するオタク青年の趣味と心理に対する描写があまりにリアリティに溢れすぎており、「著者はオタクに違いない!!」と叫んでしまう程だったのだが本筋とはあまり関係ない為、ここでは深く触れないでおく。

評価:★★★★☆

(初稿:2004/08/20)