14 Til I Die

消されるな、この想い

ミステリレビュー「地獄の奇術師」 著:二階堂黎人

地獄の奇術師 (講談社文庫)

地獄の奇術師 (講談社文庫)

 実業家の屋敷に現れた「ミイラ男」然とした怪人「地獄の奇術師」。彼によって実業家一家が惨殺されていく中、敢然と立ち向かうは、女子高生にして名探偵、二階堂蘭子
 昭和中期を意識した文体。あからさまに読者に嫌われる事を目的として描かれた蘭子の人物像。芝居がかった台詞や演出が延々と続くが、その実中身は無いに等しく、ミステリとしての独創性も希薄。
 往年の和製ミステリに対するオマージュとして読んだとしても、決して褒められたものではない。ミステリ用語が大量に飛び交い、注釈まで用意されている所をみると、ミステリマニアへのサービスと言った所なのかもしれないが、作品そのものを読む上ではこれは邪魔以外の何物でもない。
 あえて美点を挙げるとするならば、古典的なミステリの手法を遵守している事か。が、肝心の作品に魅力が無ければ、そういった演出はむしろ短所にもなりえる。演出過多の典型的な失敗例。

評価:★☆☆☆☆

(初稿:2004/08/17)